手続き全般について

個人再生 6つのデメリットとその対策

債務整理ごとの長所・短所

債務整理のなかでも、個人再生手続には、一定の財産(特に自宅)を残しながら、債務額を大きく減額できるメリットがあります。
しかし、個人再生手続は、裁判所を通じた債務整理であることから、いくつかのデメリットもあります。

今回は、個人再生手続の主なデメリット6つとその対策について解説していきます。

1. 信用情報機関への事故情報登録
2. 官報に掲載される
3. 利用制限がある
4. 保証人に請求がいく
5. 継続的な安定収入が必要
6. 手続きが複雑・時間がかかる

 

デメリット1 信用情報機関への事故情報登録

「信用情報機関」とは、ローンやクレジットカードの利用審査において個人の支払い能力や信用情報などを登録・共有している機関です。日本では「CIC(株式会社シー・アイ・シー)」「JICC(株式会社日本信用情報機構)」「KSC(全国銀行個人信用情報センター)」の3つの機関があります。

信用情報機関に事故情報(ブラックリストと言われることもあります)が登録されると、新たな借り入れやクレジットカードの発行、スマートフォン端末などの商品分割購入などができなくなります。

事故情報として登録されるのは、「支払遅れ」「強制解約」「代位弁済(保証会社が代わりに支払うこと)」「債務整理(弁護士や裁判所が介入した手続き)」などです。

個人再生手続をする場合、弁護士が通知を発送して、いったん返済を止めるので、事故情報の登録は避けられません。

しかし、破産はもちろん、1社だけの任意整理の場合でも、弁護士に依頼して債権者に通知すれば信用情報機関に登録され、各社で情報が共有される可能性があります。

よって、事故情報に載ること自体は、債務整理全般にいえることであり、個人再生手続特有のデメリットというわけではありません。

 

事故情報の掲載は、個人再生手続の場合5~7年で削除されます。信用情報機関や情報の内容によっては、いつから5年と数えるのかには差があります。

再生手続による弁済を終えていて、ご自身の信用情報について気になる方は、CICなどに「情報開示」の手続きをすれば、事故情報がまだ載っているかどうか確認することができます。

 

≪参考情報≫全銀協は、事故情報の登録期間を公開しています。

https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/about/

 

デメリット2 官報に掲載される

個人再生手続を行うと、「官報」という政府が発行する広報紙に、裁判所による決定の内容とともに氏名や住所が掲載されます。

掲載される時期は、裁判所が手続き開始の決定や、再生計画案を認可した日の数日後です。

官報への情報掲載は、破産と同じく、個人再生が裁判所を使った債務整理であることから、避けようのないデメリットです。

 

ただし、官報に掲載される情報は、破産、個人再生だけではなく、法令の改廃、行政の人事・通達その他国に関するたくさんの事項、会社の合併や決算などきわめて多岐にわたります。

個人再生に関して掲載される申立人の住所、氏名は、100頁以上ある官報の中のわずか数行に過ぎません。興味や関心をもって破産・再生歴を探すような方、信用調査を目的とする企業でない限り、一般の人の目に触れる可能性はごく小さいといえます。

ですから、官報に掲載され、個人再生を行ったことが周囲に知れわたってしまうのではないかと心配したり、過度に気にしたりする必要はないでしょう。

 

 

デメリット3 利用制限がある(上限額/対象:個人)

個人再生手続には、債務額が5000万円を超えると利用できないという決まりがあります。

住宅ローン特別条項を使う場合(住宅ローンを支払って住宅を残す場合)は住宅ローン部分を除き、それ以外の債務の合計額が対象になります。

保証債務も含みますので、会社の債務を保証する役員の方は特に注意が必要です。

保証債務などを支払しないまま長期にわたり対応せず、遅延損害金が加算されて知らないうちに5000万円を超える場合があります。個人再生手続をお考えの方で、債務額が大きい場合は、早めの対処が必要です。

 

また、「個人」再生ですので、たとえ一人だけの小さな会社でも法人には使えません。株式会社、有限会社はもちろん、合名会社、合資会社、合同会社に残った債務は別途破産手続きが必要になります。

ただし、長期間にわたって活動実績がなく、法人の実態が消えてしまっているような例外的なケースでは、法人を破産させずに、個人の債務だけを再生手続きにかけることもあります。

 

 

デメリット4 保証人には請求が

個人再生手続では、すべての債権者を公平に扱う必要があり、一部の債権者だけを除外することはできません。保証人付きの債務も、すべて一旦支払いを止め、再生手続の中で処理します。

そのため、債権者は保証人に対して一括返済を請求することになります。

保証人付き債務(奨学金など)がある場合は、事前に保証人に事情を説明しておくほうがよいでしょう。

 

また、大阪の裁判所では、保証人にまだ請求が来ておらず返済をしていなくても、「将来の求償権者」として保証人を債権者一覧表に記載し、裁判所から通知を出せるように指示します。

そのため、保証人の方には、個人再生を秘密にしておくことは難しいでしょう。

ただし、当事務所では、保証人が親であるとか、離婚した元妻であるなど、知られてしまうと将来の生活に支障が出る特別の事情がある方のケースで、裁判所に一覧表から除外することを認められた場合もあります。

 

デメリット5 継続的な収入と金銭管理が必要

個人再生手続で認可を得るためには、「履行可能性」が重要です。【「履行可能性とは」参照】

裁判所は、申立人の月ごとの収入/支出を照合し、再生計画どおり返済が可能かを判断します。

申立人に安定収入がない場合、あるいは収入があっても金銭管理が十分ではなく返済資金が残せない場合には、再生が認められないことがあります。

 

もっとも、履行可能性は、世帯全員の収入と支出から判断されます。

申立本人の収入が不足していても、同居の家族から生活費を支援してもらえるのであれば、再生の認可を得られる可能性があります。

 

また、収入が安定しない自営業の方でも、直近の収入だけでなく、半年~1年程度の平均収支を報告し、認可を得られたケースもあります。

返済資金のやりくりが可能かどうか、直ちにわからないケースでは、自信をもって再生を選択しづらい場合もあります。

ただし、申立準備の段階(2~6カ月くらい)で節約、工夫をしたり、家族の助けを借りることで「履行可能性」が認められる可能性も十分あります。

 

このデメリットは、工夫と努力で何とか回避できる場合があります。

 

 

デメリット6 手続きが複雑・時間がかかる

個人再生手続は、個人が行う債務整理のなかでもっとも複雑な手続きです。

 

まず、裁判所に債務減額が必要な状況かどうか、減額が相当かを判断してもらうために、破産と同じあるいはそれ以上の資料をそろえる必要があります。

しかも、対象財産の評価や、家計実績から返済資金のねん出を検討、工夫し、履行可能性を考慮した再生計画案の作成を行う必要があり、非常に専門性が高く、本人で申し立てをすることはかなり難しい手続きです。

当事務所の実感としては、同じ職業(収入)、資産(及び借入額)の規模の相談者が、破産ではなく個人再生を希望する場合、その準備と申立には、破産の1.5倍から2倍以上の手間と時間がかかります。

 

また、個人再生については、取扱い経験のある弁護士はそれほど多くありません。

しかも「自営業者」「一定の資産あり」「任意整理中」「訴訟・差押え」などの特殊事情があれば、見通しが立てにくいため、弁護士の方から依頼を断られてしまう場合も多いようです。

 

さらに、申立の準備(費用や資料)に最短1~通常4、5か月かかり、申立後は、認可決定(裁判所での手続きの終了)までに約4か月かかります。

実際に返済を開始するのはさらに1~2か月後ですので、弁護士に依頼してから1年は手続きに関わることになります。

そのうえ、そこから3年~5年にわたって支払を行いますので、すべての手続きを終えるまでかなり長期間を要します。

 

ただし、時間がかかるということは、返済のための資金をそれだけ長く貯められるということでもあり、継続的に返済資金を用意できる方にとっては、デメリットというよりもむしろメリットともいえます。

 

無料相談を利用して、信頼できる弁護士に依頼を

 以上、個人再生の6つのデメリットを説明しました。

個人再生に限らず債務整理には、避けられないデメリットがいくつかあります。

しかし、個人再生手続は、住宅や一定の財産を残しながら、債務を5分の1あるいはそれ以下に大幅減額できる制度ですので、「全額返すのは難しいが、何とか財産(家、自動車、保険)を残したい」と考える方にはとても役立つ手続きです。

 

この項目で述べたデメリットが、実際にご自身のお仕事や生活にとってどのくらい影響するのか詳しく知りたい方は、個人再生の取扱い経験の多い弁護士にご相談ください。

監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。