手続き全般について

個人再生、失敗したらどうなる?棄却・廃止後の手段は

個人再生手続には、わずかながら「棄却」や「廃止」という、手続きが失敗してしまうケースがあります。

 

再生計画の認可に至らなかった事件は、令和2年度では申し立て全体の6%で、そのうち約半数が「取下げ」となっています。

残りの約3%は、手続きを進める意思があるのに裁判所に認められず終わってしまった、つまり失敗してしまったケースということです。

 

個人再生では申し立ての90%以上は認可されますが、「もしも自分が失敗したらどうしよう」と不安に思われる方もいらっしゃいます。

ここでは、失敗の理由、またその後の対処方法について、解説していきます。

 

失敗したあとの対処方法

もしも個人再生手続が失敗してしまったら、どうすればよいでしょうか。

 

失敗の理由としては

1.個人再生手続の要件を満たさなかった

2.再生計画案の提出期限を過ぎてしまった

3.履行可能性が認められなかった

4.(小規模個人再生の場合)過半数の債権者の不同意意見が出された

などが考えられます。

 

それぞれの理由によって、次に取ることができる手段が変わってきます。

失敗の理由ごとに詳しく見ていきましょう。

 

1.個人再生手続の要件を満たさなかった

個人再生手続の要件として、「①申立てをする債務者が個人であること」「②債務者に継続または反復して収入を得る見込みがあること」「③債務の総額が5000万円以下であること」などがあります。

弁護士代理の場合、要件を満たさない申し立てをすることはないはずですが、②と③については、後から事情が変わる可能性があります。

 

②は、申し立てた後に本人が失業してしまったケースです。

この場合は、再就職などで安定した収入を得られるようになってから再度申し立てることができます。

しかし、次の申し立てまでの間に債権者から訴訟を起こされたり、支払停止中の利息が加算されて、支払総額が増えることについては注意が必要です。

 

③は、申し立て時点での債務が5000万円を超えていなくても、新たな債務が発覚したり、債権者から遅延損害金の加算を求められて、上限5000万円を超えてしまうケースです。

 

この場合、一部の債権者に働きかけて届出債権を減免してもらう方法、ごくわずかの超過であれば、弁護士、裁判所の了解のもと一部弁済してしまうなどの方法もないわけではありません。

 

しかし、超過部分を解消できなければ個人再生手続を続けられず、自己破産を検討する必要もあるでしょう。

 

2.再生計画案の提出期限を過ぎてしまった

個人再生手続の中でも、再生計画案の提出期限は最も重要視されるものです。

大阪地裁では、提出期限の1週間前までに提出するよう指示があり、提出がなければ裁判所から連絡があります。

しかし、それでも提出期限に提出ができなかった場合は、再生手続の「廃止」という決定が出されます。

 

当事務所では、期限経過が理由で廃止されたことはありませんが、期限内に出しさえすれば認可されるはずだった事件が、このことだけで廃止され、もう一度申立を余儀なくされるのであれば大変もったいないことになります。再生を担当する弁護士、司法書士は、提出期限を必ず守るべきです。

 

この場合も、個人再生手続を再度申し立てることは可能です。

 

3.履行可能性が認められなかった

個人再生手続は、住宅ローン、滞納税などの例外を除き、原則としてすべての債務の20%~10%を、3年~5年で完済することが求められます。

そのため、提出した返済計画で支払っていけるかどうか(いわゆる履行可能性)の見通しを裁判所に理解してもらえないと、個人再生手続が認可されません。

 

この場合でも、収入増や支出減によって家計を改善したり、親族に協力を頼むなどして、履行可能性が認められるよう状況を改善し、ふたたび、個人再生手続を申し立てることは可能です。

 

しかし、住宅ローンや税金を滞納したり、毎月の光熱費が期限までに支払えないなど、返済資金が捻出できないような状態であれば、再度申し立てるのは難しいでしょう。

 

債務をそのままにしておくと、債権者も訴訟や差押といった手段を取る可能性があります。

このような場合、借金を解決するためには、自己破産も選択肢として考えなくてはいけません。

 

4.(小規模個人再生の場合)過半数の債権者の不同意意見が出された

小規模個人再生手続の場合、給与所得者再生手続に比べ、返済額が少なく済むケースが多いです。

そのため、当事務所を含め多くの弁護士、司法書士は、再生を希望される方の第一選択を小規模個人再生としています。

 

ただし、小規模個人再生では、再生計画案に対して債権者の過半数の頭数もしくは債権額の債権者が「不同意」の意見を出すと、手続きは廃止になってしまいます。

 

これに対し、給与所得者等再生手続では、債権者に対し、同意/不同意を求める機会がないため、裁判所の判断だけで認可決定を得ることができます。

 

ただし、給与所得者等再生の認可を得るには、小規模個人再生よりも「履行可能性」を厳しくみられることがあります。また、返済額が小規模個人再生よりも高額になる傾向にあります。

 

小規模個人再生で不同意になった場合、給与所得者基準でも返済が可能な計画が立てられるか充分に検討したうえで、再度個人再生の申し立てを行うとよいでしょう。

 

失敗しても落ち着いて次の手段を

個人再生手続が失敗するケースは、上記のとおり、明らかな理由があります。もし認可されずに終わったとしても、しっかりと理由を分析し、その問題を解決できれば、次のステップに進むことができます。

 

もっとも、再度の申し立てには、申立費用が余計に掛かりますし、時間もそれだけかかってしまいます。

 

これから再生を申し立てることを検討されている方は、一度の申立で確実に認可を得られるように、申立前に申立代理人の事務所と打ち合わせをして、しっかりと準備と対策をしておくべきでしょう。

 

監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。