債務について

再生計画「意外な質問」「ちょっと珍しい質問」と回答例

【特別編】「意外な質問」「ちょっと珍しい質問」と回答例

当事務所では、これまで数多くの再生手続を希望される方のご相談を受けてきました。

そのなかには、専門家の立場からすると「そんなことまで心配されているのか」と思うような、意外な質問をいただくこともあります。

そうした質問に対しては、一つひとつ丁寧に説明し、誤解を解き、不安を和らげることを大切にしています。

また、同じ質問が繰り返されるということは、それだけ多くの方が同じ疑問や不安を抱えているのではないか、ということに気づかされました。

 

そこで今回、再生制度に関して、相談の際に実際に受けた質問と回答をまとめました。

「自分も同じ疑問を持っていた」「そんな考え方もあるのか」など、色々な受け止め方があると思いますが、参考にしていただければ幸いです。

今回は、第2回 再生計画に関して、質問と回答例をご紹介します。

 

第1回 収入/家計収支に関して
第2回 再生計画に関して
第3回 制度全般に関して

第2回 再生計画に関して

【1 口座振替の希望】

【2 まとめ払いしたい】

【3 6年以上の弁済期間は?】

【4 再生計画のリスケジュール?】

【5 返せなくなったらどうする?】

【6 早く返したら安くなる?】

【1 口座振替の希望】

Q 再生認可された後の返済は、預金口座から引き落としでお願いしたい。

A 口座振替には各社対応していません。

再生手続では、各債権者は口座振替に対応しておらず、所定の期限までに再生債務者が振込送金する必要があります

なお、再生計画では、毎月返済のほかに、3か月に1回の支払いを選択することができます。

また、支払い忘れが気になる方は、支払管理を弁護士事務所に委託することもできます。

 

【2 まとめ払いしたい】

Q 振込手数料がもったいないから、小口の債権者は先に一括で返してもいいですか。

A 一括返済可能な債権には条件があります。

大阪地方裁判所の基準では、1カ月当たりの弁済額が1000円に満たない債権者には初回一括払いが許されています。

例えば、3年間で弁済する場合は3万6000円、5年間で弁済する場合は6万円以下が基準になります。

これよりも高い金額については、初回一括返済できません(他の地域については別途ご確認ください)。

 

ただし、弁済開始後に、残額を早期一括返済することは可能です。

当事務所の支払管理では、月々の返済額よりも多く積立ができる方には多めに積立ててもらうようにしています。

そして、積み上がった余剰金によって、残りの債務を全額返せるようになったら、全社一括で返済するようにしています。

こうすることで心理的負担を解消するとともに、振込手数料の節約になります。

 

【3 6年以上の弁済期間は?】

Q 再生計画の返済期間を6年か、7年にしてほしいです。

A 個人再生では、6年や7年の返済計画を立てることはできません。

再生計画は原則として3年、特別な事情がある場合でも最長で5年までしか作成できません。

これは法律上の規定ですので、全国どこの裁判所、弁護士が対応しても、5年を超える返済計画は認められません。

 

【4 再生計画のリスケジュール?】

Q 再生債務の返済期間を3年で計画しましたが、返済が厳しくなったとき、返済期間を延長してもらえますか。

A 延長できる可能性はありますが、条件はかなり厳しいです。

再生計画で決められた返済期間は、特別な事情があれば最長で2年まで延長することができます。つまり、3年計画を5年に延ばせる場合があります。

ただし、延長が認められるのは「やむを得ない理由」がある場合に限られます。

「やむを得ない理由」とは、たとえば、病気やケガで働けなくなった、勤め先が倒産して収入が途絶えたなど、本人の努力ではどうしようもない場合を指します。

「物価が上がったから」「子供が大きくなって教育費がかかる」といった一般的な理由では認められません。

 

【5 返せなくなったらどうする?】

Q 返済の途中で失業、休職した場合どうなりますか。

A 少し待ってもらうことが現実的な選択肢です。

3~5年の返済期間のうちに、返済の途中で仕事を失ったり、休職して収入が下がって返済できなくなる可能性もあります。

この場合、そのまま何ヵ月も連絡せずに放置すると、裁判所から再生計画を取り消される危険があります。
ただし、債権者に事情をきちんと説明して「再就職まで数か月待ってほしい」とお願いすれば、一定の期間は待ってもらえることもあります。
ですので、返済が止まりそうであれば、まずは債権者に連絡しましょう。

 

さらに、働けない状況が今後も続き、支払いの見通しが立たないような場合には、ハードシップ免責という残りの借金を免除してもらえる制度を使えることがあります。

ただし、これは誰でも使えるわけではなく、次のような「やむを得ない(=自分ではどうしようもない)事情」を裁判所に認めてもらう必要があります。

• 病気やケガで働けなくなった
• 勤め先が倒産して収入がなくなった
• 地震・洪水・火災などの災害で財産を失った

非常にレアな手続きですが、可能性がある場合にはやってみるとよいです。

 

【6 早く返したら安くなる?】

Q 再生債務の分割返済の途中で、残額を一括返済すると返済額が安くなりますか。

A 返済額は変わりません。

再生計画で決定した再生債務は、その後の交渉で減額されることは(少なくとも金融業者に関しては)ありません。

ただし、分割分をまとめて返済すると、以後の振込手数料は必要なくなります。

弁護士に支払管理を委託している場合、各回の事務手数料も不要になるので、結果的には、手数料分が数千円~数万円安くなることが見込まれます。

 

監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。