債務について

親、友人、会社にどう説明する? 再生債権者側から見た個人再生の流れ

個人再生の相談を多数受けていると、相談者が近親者から借り入れをしている場合の対応につき、相談を受けることも少なくありません。
例えば、相談者の勤務先、親族、友人などから借入れがあり、「手続きをどのように説明すればよいのか分からない」「急に返済が止まることで関係が悪化しないか不安」といった相談です。
以下では、当事務所で取扱う再生手続きをベースとして、再生債権者の立場からみた個人再生手続の流れを、各場面に沿って説明し、対応方法をご説明します。
さいごに、貸付等のある身内の債権者から、良く投げかけられる質問とその回答例をお示しします。

目次

1 弁護士に依頼したとき
2 返済停止から申立てまで
3 申立てから開始決定まで
4 再生計画案の提示と債権者の対応
5 認可決定後と支払開始
6 よくある質問と回答例

1 弁護士に依頼したとき

個人再生手続(破産の場合も同様)では、債務の種類や相手を問わず、一律に返済を停止する必要があります。
銀行や信販会社だけでなく、親族・友人・勤務先からの借入れも例外ではありません。
このような借入も、債権として個人再生手続きで対応、処理する必要があります。

債権者と日常的な交流がある場合には、可能であれば依頼者本人から事前に事情を説明したうえで、その後、弁護士から正式な通知を送付した方が、理解を得やすいことが多いです。
もっとも、感情的な対立やトラブルが予想される場合には、依頼者本人からの説明を省略し、弁護士から直接通知を送付します。

弁護士からの通知には、主に以下の内容が記載されます。

・現在の負債総額
・個人再生(または破産)申立てを予定していること
・手続に伴い、返済を一時停止すること
・今後は法律に基づいて対応すること
・貸付日、貸付額、現在残高等を記載した債権調査票の返送依頼

破産の場合は、「もう返済はないのだな」と理解され、通知後に連絡が急激に減ることもあります。
一方、個人再生の場合は、一定額が分割返済される前提の手続です。
そのため、いつから返済されるのか、いくら返済されるのかといった質問を受けることがあります。

もっとも、この時点では、財産状況や債務額の変動により弁済率が左右されるため、確定的な説明はできません。
「弁済率は10~20%が多い。返済期間は3から5年まで」と一般的な回答にとどめておく方が無難でしょう。

2 返済停止から申立てまで

返済停止後、各債権者の債権内容の確認や、財産資料・収入資料の収集が進められ、準備が整い次第、裁判所に申立てが行われます。

当事務所では、早い場合で約2か月、遅くとも7か月程度で申立てに至るケースが多いですが、事務所によっては1年から2年程度を要する例もあるようです。

この期間中、債権者側で特段の手続が必要となることはなく、原則として裁判所や代理人からの連絡を待つことになります。

3 申立てから開始決定まで

申立て後、裁判所による書類審査を経て、手続開始が相当と判断されると、開始決定が出されます。
申立てから1か月以内に開始決定が出るケースもありますが、調査が必要な事件や、個人再生委員が選任される事件では、2~3か月程度かかることもあります。

開始決定が出ると、各債権者宛に裁判所から開始決定通知が送付されます。
裁判所からの通知には、概ね以下の事項が記載されています。

・申立人の事件が再生手続として正式に開始すること
・今後のスケジュール(債権の調査、再生計画案の提出時期)
・債権者一覧表が添付されており、事前申告の金額と相違や増加がある場合には届出期間内に「債権届出」が別途必要であること
(※いずれも、大阪地裁の場合です。各裁判所により内容は一部異なる可能性があります。)

債権者は、債権者一覧記載の債権額をみて、計上もれがある場合や、利息を追加で請求する場合には、再生債権届出期間のうちに、借用証や取引明細などの根拠資料を添付して債権額を裁判所に提出します。

1の支払停止時の債権調査はあくまでも代理人による仮の調査であり、この裁判所からの調査が、再生計画案に掲載する金額の基礎となります。
なお、支払停止時の金額から変わりがない債権者は、特に応答する必要はありません。

そのまま債権額が申立額金額の大幅な相違や、当事者の誤りなどで争いになるケースはごくまれであり、ほとんどの事件では異議なく債権調査が終了します。

4 再生計画案の提示と債権者の対応

債権調査が終了すると、開始決定からおおよそ2か月程度で、申立代理人が裁判所に再生計画案を提出します。

一般的な再生計画案の内容は、届出債権額のおよそ10%から20%程度を、原則3年(事情がある場合には4年または5年)で分割返済するというものです。

裁判所は、提出された再生計画案が適法と判断したときは、各債権者宛に再生計画案を郵送し、これに対する意見を述べる期間を告知します。

小規模個人再生の場合、債権者に与えられる選択肢は、特に意見を提出しないか、再生計画案に不同意である旨の意見書を提出するかのいずれかです。
不同意の理由は特に記載しなくてもよいので、「協力したくない」といった感情的な理由でも不同意意見が提出されることがあります。

頭数または債権額の過半数の債権者が不同意の意見を示した場合、手続は廃止となります。
もっとも、不同意で廃止になるのは極めて例外的です。

5 認可決定後と支払開始

意見提出期間(通常4週間)が経過すると、裁判所は再生計画を認可します。

認可後は、申立代理人から債権者宛に、認可決定通知とともに、今後の支払先口座を指定する書面が送付されることが多いです。

債権者は、申立代理人宛に送金先を指定します。

支払開始時期は、再生計画案に、認可確定月、その翌月、または翌々月と定められており、多くの場合、認可通知の翌々月頃から支払が開始されます。

6 よくある質問と回答例

個人再生の債権者からよく受ける質問とその回答例を、以下の通りQ&Aにしました。
(状況により回答内容が変わります。あくまで参考例としてご覧ください)。

Q1 なぜ、親や友人への返済まで止めなければならないのですか。

個人再生手続では、すべての債権者を平等に扱う必要があります。特定の人にだけ返済を続けることは、法律上認められていません。
裁判所の手続に従うため、一律に、返済を止める必要があります。

Q2 個人再生をすると、もう一切返してもらえないのですか。

いいえ。個人再生は破産と異なり、一定額を分割で返済することを前提とした手続です。
最終的な返済額や返済期間は裁判所の判断を経て決まりますが、一般的には、債権額の一部が3年から5年にわたって支払われます。

Q3 いつから、いくら返済されるのですか。

手続の初めの段階では、正確な返済額や開始時期は確定していません。
財産状況や債務額が確定した後に再生計画案が作成され、裁判所の認可を経て決まります。
目安としては、返済額は債権額の10%から20%程度、返済期間は3年から5年程度となることが多いですが、個別事情により変動します。

Q4 こちら(債権者)は、何か手続きをしなければなりませんか。

原則として、特別な対応は必要ありません。
裁判所から開始決定通知が届いた後、債権者一覧表に記載された金額に誤りがある場合や、利息を追加で請求する場合のみ、債権届出を行っていただく必要があります。
金額に変更がない場合は、そのまま再生計画が認可されるのをお待ちいただくことになります。

Q5 再生計画案に納得できない場合は、拒否できますか。

小規模個人再生の場合、再生計画案に対して不同意の意見を出すことは可能です。
不同意される場合には、所定の期間内に、裁判所に対して書面を提出する必要があります。
もっとも、不同意によって手続が廃止されるケースは、実務上はまれです。

Q6 手続が終わったあと、本人から減らされた差額を返してもらうことはできますか。

再生計画が認可された後の返済は、再生計画に定められた方法および金額に従って行われます。
個別に条件を変更したり、計画外の返済を受けることはできません。返済は、計画に従って順次行われます。

Q7 個人再生をしたことで、こちらに何か不利益はありますか。

債権の相当部分が減額され、分割でしか受領できない点では不利益といえますが、裁判所の関与のもとで手続が進むため、返済の見通しが立つという側面もあります。また、債権者側に新たな義務や責任が生じることは、通常ありません。

Q8 依頼者の母です。弁護士からの通知を受け取り、状況は理解しました。私は再生手続での返済を求めません。権利を放棄したいのですが、どうすればよいですか。

返済を求めない、権利を放棄するという意思が明確である場合には、その旨を記載した書面を、弁護士宛に返送していただく方法があります。
書面には、再生手続において当該債権について返済を求めないことの意思が明確に読み取れる記載があれば足ります。
もっとも、書き方に迷う場合や不安がある場合には、無理に作成せず、申立代理人である弁護士に相談したうえで対応することをおすすめします。

監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。