家計について

家計収支表の作り方

個人再生手続きを申し立てる際、依頼者の皆様が「難しい」「どう書いたらいいのかわからない」とご相談されることが多いのが家計収支表の作成です。

裁判所では、個人再生手続や破産手続の申立時に、直近2ヶ月分(又は3カ月分)の家計収支表の提出が求められます。しかし、それまでお金の出入りを記録する習慣がなかった場合、長期間の収支をまとめるのは容易ではありません。

個人再生の契約から申立までには、費用の積立や書類収集により数ヶ月かかることが一般的です。当事務所では、この期間中に家計収支表をご準備いただくようお願いしています。

このコラムでは、家計収支表の作成方法について順を追って解説し、最後にQ&Aもご紹介します。

※以下の例は、当事務所が近畿圏内で実際に受任した案件に基づいています。作成方法は地域や専門家によって異なる場合があります。

目次

1【まずは資料集めから】
2【区切りを決める】
3【数字を埋めていく】
4【よくある間違い】
5【現状把握の重要性】
6【まずは作ってみる】
まとめ

1【まずは資料集めから】

(1)収入関係

家計収支表には、1カ月ごとの収入と支出を記載しますが、その裏付けとなる資料が必要です。

収入の主な根拠資料は以下のとおりです。

・給与明細
・子ども手当の給付決定書
・年金の通知書

自営業の場合は、売上や報酬が入金される口座の通帳履歴を確認します。

(2)支出関係

支出については、以下の資料が主な根拠となります。

・電気、ガス、水道料金の領収書
・家賃または住宅ローンの支払記録
・通信費の領収書
・保険料の領収書
・教育費の支払記録

口座振替の場合は通帳履歴から確認できます。食費や日用品なども、可能であればレシートを保管するのが理想です。

まずは1ヶ月分、領収書や支払記録を捨てずに保管するところから始めましょう。

2【区切りを決める】

家計収支表は1ヶ月単位で作成します。基本は毎月1日から末日ですが、給料日を基準とする方法も可能です(例:6月25日~7月24日)。

一度決めた期間は、その後も同じ基準で統一することが重要です。

3【数字を埋めていく】

(1)まずは資料があるものから

各裁判所ごとに書式がありますので、資料に基づいて該当項目に数字を入力していきます。

すべての項目を埋める必要はありません。迷った場合は「その他」に内容を記載して金額を入力します。

(以下は、大阪地方裁判所の個人再生用書式です)

(2)資料がないもの

食費や日用品は細かく分けるのが難しく、レシートがない場合も多いでしょう。

その場合は、まず大まかな数字で構いませんので記入することが大切です。

後日、実際の支出との差を確認し、精度を上げていきましょう。

参考として、当事務所でよく見かける一般的な食費の目安は以下のとおりです。

・一人暮らし:3万円~6万円
・家族3人:5万円~9万円程度

4【よくある間違い】

(1)利用料と支払月のずれ

光熱費などの「利用月」で記入してしまうケースがありますが、支払月で記入するのが正しい方法です。

例えば2月に支払った光熱費は、1月分の使用料であっても2月の支出として家計収支表に記載します。

支払ができなかった場合はその月は0円、翌月にまとめて支払った場合は翌月に記載します。

使った月ではなく、あくまでも支払った月の支払額を家計収支表に付けるようにしましょう。

(2)勝手に割り付けしない

2ヶ月分の収入や支出を1ヶ月分に分割して記載するのは誤りです。

実際に入金・支払があった月に、そのまま記載するのが正しい方法です。

5【現状を把握することが第一歩】

(1)集計作業

収入と支出の合計を計算し、差額を確認します。

収入から支出を引いて余剰があれば問題ありませんが、マイナスの場合は赤字となります。

赤字が続くと、いずれ生活が維持できなくなるため注意が必要です。

(2)見直すことが大切

一度作成すると、どの支出が多いのかが見えてきます。

どこを見直し、節約すれば改善できるのかを把握できることも多いです。

個人再生手続の申立までに、履行可能性が認められるように収支を改善していければ申立は可能です。

6【まずは作ってみる】

「正確でないと提出できない」「全部埋まっていない」と不安に思う方もいらっしゃいます。

しかし、多くの弁護士は、提出前に事務員と弁護士が内容を確認し、不足資料の案内や修正を行います。

不完全な状態で裁判所に提出されることはありませんので、まずは作成することが重要です。

逆に、家計収支表が作成されないために、申立ができず、手続が進まないケースは多く見られます。

まとめ

家計収支表は、個人再生手続において重要な資料ですが、最初から正確に作成する必要はありません。

まずは資料を集め、可能な範囲で数字を記入することが第一歩です。

作成を通じて収支の実態を把握し、無理のない生活改善につなげることが重要です。
再生の必要性を感じている方は早めに作成に取り掛かりましょう。
既に申立の準備に入っているものの、その作り方がわからない場合、専門家のサポートを受けながら取り組むようにしましょう。

Q&A【家計収支表でよくある質問】

Q1 レシートを捨ててしまいました。どうすればよいですか?

レシートがなくても、まずは概算で記入して問題ありません。提出までにおおよそ正しい数字が出せるようにしましょう。

特に食費や日用品は、細かく管理していない方も多いため、「だいたい毎月これくらい」という金額から始めるケースもよくあります。

電気・ガス・水道・家賃・通信費などは、通帳履歴やアプリの利用明細で確認できることが多いため、これらの根拠を集めましょう。

Q2 赤字になってしまっていますが、大丈夫でしょうか?

一時的な赤字であれば、すぐに問題になるわけではありません。

ただし、毎月継続して大幅な赤字になっている場合は、個人再生後の返済継続が難しいと判断される可能性があります。

家計収支表は、現在の生活状況を把握し、どこを改善すべきか確認するための資料でもあります。作成後に支出を見直していくことが重要です。

Q3 クレジットカード払いは、どの月に記入すればよいですか?

実際に口座から引き落とされた月に記入するのが基本です。

例えば、1月にカード利用した食費が、2月に引き落とされた場合は、2月の支出として記入します。

利用日基準ではなく、「実際にお金が動いた月」で整理するとわかりやすくなります。
(なお、ご本人は債務整理の準備中にはクレカ利用はできません。ご家族が光熱費を払っている場合や買い物に利用している場合を想定しています。 )

Q4 家族の収入も記載する必要がありますか?

同居家族と家計が一体になっている場合は、家族の収入や支出も記載が必要になることがあります。

特に、配偶者の収入で生活費を補っている場合などは、家計全体の状況を確認する必要があるためです。

どこまで記載が必要かは、裁判所や事案によって異なるため、担当弁護士に確認しましょう。

Q5 細かい数字が違っていたら問題になりますか?

多少の誤差が直ちに問題になるわけではありません。

家計収支表は、家計の流れを把握するための資料ですので、まずは全体像を整理することが重要です。

不明点や不足資料については、申立前に弁護士や事務員が確認・修正を行います。

「正確にできないから作れない」のではなく、「まず作ってみる」ことが大切です。
(但し、住居費、税金、通信・光熱費などは根拠資料を照合し、きちんと支払額を転記するようにしましょう。)

監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。