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収入の確保、滞納の解消―(元)会社役員、代表者の注意点5

再生認可を得るためには

全5回にわたり、元会社役員、代表者の個人再生についてご説明しました。

最終回は、収入確保、滞納解消の重要性について説明します。

会社経営者、役員の再生事件では、(1)総債務額が大きくなりやすいことを第1回に説明いたしました。

個人再生では、

(1)1500万円以下の場合最大80%減額(最低弁済額100万円)

(2)1500万円以上3000万円以下の場合は一律300万円

(3)3000万円以上の場合は最大90%減額

というように、債務額が増えるにしたがって減額率も大きくなります。

しかし、実際には、3000万円を超える再生事件では、月々の支払額も大きくなり、支払うための収入をどうやって確保するのか、頭を悩ませることもあります。

例えば、総債務3000万円~5000万円の場合、最低300万円~500万円を所定の期間内に払う必要があり、支払月額は、毎月8万4000円~14万円の返済になることが見込まれます。

これを3~5年のあいだ、毎月途切れずに続ける必要があるのですから、一時的な節約、残業、営業成績向上だけではどうにもならないこともあります。

また、通常のローンや会社保証債務に加えて、税金、国民健康保険料の滞納があった場合には履行可能性の判断が厳しくなります。

再生手続きでは税金・国保料は減免されません。この場合、上記8万4000円~14万円を払いつつ、滞納した税金・国保料を支払い、さらに、月々発生する税、保険料も遅れずに支払う必要があります。これは非常に厳しい支払いになることが予想されます。

これに加えて、住宅ローンの滞納があり、いわば三重苦となる事例では、当事務所の経験上、巻き返しを図ることはほぼ無理になります。滞納した住宅ローン部分を将来の返済に組み込んだり、返済期限を延ばす「リスケジュール型」の再生申立は、金融機関の協力を得るのが難しいばかりか、優遇金利が使えなくなってトータルの支払額がかなり大きくなることから、当事務所ではよほどの理由がない限り利用しません。

以上のことから、現在、上記3つの債務(一般債務、税金関係、住宅ローン)を滞納しそうな懸念がある人で、将来債務整理を考えている方は、できるだけ滞納をしないこと、住宅ローンを滞納しても早期に解消することを考えましょう。

なお、今も役員として会社に所属しており、そこから給与を得ている申立人の場合、会社の業績見通しなどを詳しく評価されることがあります(その際の連帯保証替えをどうするかについては第3回にお伝えした通りです。)。

 

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監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。