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弁護士が再生の依頼を断る理由~他事務所の場合~

弁護士が再生の依頼を断る理由~他事務所の場合~

当事務所には、他の法律事務所に相談した後に来られる方が多くいらっしゃいます。

最近は、広告を出している大手の弁護士法人や、地元の弁護士に一度相談したうえで、セカンドオピニオンとして当事務所に相談される方も少なくありません。

当事務所では、以前に別の事務所で断られた方に対して、「どのような見通しを伝えられたのか」「どのような点を問題視されたのか」をお聞きすることがあります。

今回は、その中で比較的多かった理由を、順番にご紹介します。

目次

1 個人再生を扱っていないと言われる
2 収入が高いから個人再生はできないと言われる
3 ギャンブルをしたから個人再生はできないと言われる
4 身内への返済や財産の無償譲渡がある
5 積立ができない、連絡に応じない
6 まとめ

1 個人再生を扱っていないと言われる

(1)個人再生ではなく任意整理又は破産をすすめられる

他の事務所で断られた理由として、弁護士が明示的に、または遠回しに「個人再生を扱ったことがない」と説明しているケースがあります。

この場合、その弁護士は、個人再生ではなく、任意整理や自己破産をすすめることが多いようです。

しかし、本来であれば、債務整理の方針は、負債総額、債務の種類、収入、資産、借入れの原因、家族の協力が得られるかなどを総合的に見て判断すべきです。

そのため、「個人再生はできないが、任意整理か破産なら受ける」という対応は、弁護士の姿勢として、望ましいものではありません。

(2)個人再生が避けられる理由

個人再生は、申立資料の準備が大変なうえ、申立て後も申立代理人である弁護士に多くの作業が求められます。

しかも、苦労して準備した申立てが廃止になることもあります。その場合には問題が解決せず、別の手続を検討し直す必要があります。

このように、個人再生手続は責任が重く、経験のない弁護士にとっては対応しにくい手続です。

そのため、「個人再生はやったことがない」「個人再生は扱わない」と説明する弁護士が多いことも理解できます。

(3)破産は結果を出しやすい

自己破産が簡単というわけではありません。

ただ、弁護士の中には、「破産は申立てさえすれば、あとは裁判所が判断する」と考えている人もおり、早く結果を出すために破産をすすめるケースもあるでしょう。

もちろん、このような考え方や対応は、望ましいものではありません。

2 収入が高いから個人再生はできないと言われる

(1)もっと払えるはずとの考え

「収入が高いから個人再生はできない」と説明されるケースもあります。

たとえば、月収50万円で負債が800万円ある相談者を考えてみます。

任意整理で元金を5年間で返済する場合、毎月約13万5,000円を支払う必要があります。

一方、個人再生であれば、高額な財産を持っていない限り、返済総額を最低160万円まで減額できる可能性があります。

この場合、3年間で返済すると、毎月約4万5,000円を支払えれば足りることになります。

個人再生の経験が少ない弁護士の場合、実務対応を十分に確認しないまま、「そんな都合のよい話はないはずだ」「裁判所や債権者から、もっと返すように言われるはずだ」と考えて、個人再生を断ることがあります。

しかし、このような対応は、個人再生の実務経験が乏しいために行われている可能性があります。

(2)家族の収入も支払いに充てるべきとの考え

また、次のようなケースもあります。

相談者本人月収は20万円で、負債が800万円ある一方、配偶者月収が50万円あり、世帯収入としては月70万円ある家庭を想定しましょう。

このような場合に、「配偶者に返済を助けてもらいなさい」と告げ、個人再生の依頼を受けない弁護士もいます。

その弁護士は、「借りたお金は家族の助けを借りてでも返すべき」という倫理的・道徳的な観点から説明しているのかもしれません。

しかし、当事務所では、これまで家族の収入が高いことを理由に、裁判所から返済金額を問題視された経験はありません。

当事務所では、予定弁済額に比べて収入が高いという理由だけで、個人再生の依頼をお断りすることはありません。

ただし、財産調査は慎重に行います。調査の結果、保有している財産が多い場合には、最低弁済額が上がることがあります。これを「清算価値保障の原則」といいます。

3 ギャンブルをしたから個人再生はできないと言われる

(1)弁護士に依頼した後のギャンブルや投資

弁護士に依頼した後で、競馬、競輪、パチンコ、オンラインカジノなどのギャンブルをしてしまう方がいます。

債権者に対して支払いを止めてもらっているにもかかわらず、ギャンブルや浪費を続けることは、裁判所から強く問題視されます。

また、投資名目で行う仮想通貨取引、FX、バイナリーオプション、海外投資業者への送金なども、同じように問題視されます。

受任後、これらの取引が発覚したことを理由に、弁護士が個人再生申立てを辞任するケースは少なくありません。

もっとも、すべての受任後の浪費ケースで直ちに個人再生ができなくなるわけではありません。

たとえば、宝くじを数百円買っただけ、あるいは深く考えずに仮想通貨を5万円だけ購入したという程度であれば、それだけで申立てが否定されるとは限りません。

金額や回数、時期、反省状況によっては救済されることもあります。

そのため、他の事務所で断られた場合でも、別の弁護士に相談してみる価値はあります。

(2)弁護士に依頼する前のギャンブルや投資

借金の原因に、ギャンブルや株取引などによる多額の損失がある場合でも、個人再生は可能です。

ただし、極端なケースは別です。

たとえば、取引を始める前から「失敗したら個人再生で借金を減らせばよい」と考え、投資資金として2000万円を借り入れ、仮想通貨に投資したものの、すべて失ったとして個人再生を申し立てるようなケースです。

このような場合には、不誠実な申立てとして、申立が棄却される可能性があります。

4 身内への返済や財産の無償譲渡がある

金融業者などへの支払いを止めているにもかかわらず、配偶者や親族にだけ返済を続けることがあります。

このような返済は、「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といいます。

また、手元の財産を減らすために、不動産、自動車、高額品などを無償または安い価格で譲渡するケースもあります。

破産手続の場合、このような行為は「否認対象行為」と評価され、破産管財人から財産の取戻しを求められることがあります。応じなければ、管財人が取戻しや差額の徴収を行うことになります。

個人再生では、破産手続のように取戻しを義務付ける制度はありません。

ただし、譲渡した財産相当額が、まだ手元に残っているものとして清算価値に組み入れられることがあります。
また、内容によっては、弁済額に上乗せするよう指示されることもあります。

さらに、あまりにも悪質な場合には、不誠実な申立てとして棄却される可能性もあります。

弁護士が辞任する理由として偏頗弁済や無償譲渡を挙げる場合、比較的はっきりした問題行動があることが多いです。

たとえば、不動産の名義変更、事業の低額・無償譲渡、高額財産の移転などが典型です。

5 積立ができない、連絡に応じない

(1)積立ができない

どの法律事務所でも、個人再生を依頼すると、その後は債務の返済をいったん止めることになります。

返済が止まることで生活は安定しやすくなりますが、その一方で、申立てに向けた準備が必要になります。

具体的には、必要資料を集めたり、弁済予定額・弁護士費用を毎月積み立てたりする必要があります。

しかし、個人再生を依頼された方の中には、予定どおり積立てができない方もいます。

積立できない理由としては、たとえば次のようなものがあります。

・返済を止めても、思ったほどお金が残らない
・つい積立てを忘れてしまう
・配偶者に債務整理のことを伝えていないため、送金ができない

このような状況が続くと、弁護士は辞任してしまいます。

(2)連絡に応じなくなるケース

個人再生では、会社関係の書類、家族に関する資料、家計収支表などが必要になることがあります。

これらの資料を取得できなかったり、家計収支表を作成できなかったりすると、弁護士からの連絡に応答できなくなってしまう方もいます。

依頼者と連絡が取れない状態が続くと、弁護士が手続を進めることができません。

その結果、弁護士から辞任されてしまうことがあります。

6 まとめ

他の法律事務所で個人再生を断られる理由には、事務所側が個人再生を扱っていない場合や、収入が高いことを理由に難しいと判断される場合があります。
このような場合は、早めに別の弁護士へ相談することが大切です。

一方で、ギャンブルや投資、身内への返済、財産移転、積立不足、連絡不通は、どの弁護士でも申立てをためらう事情です。
手続を進めるためにも、依頼後の行動には十分注意しましょう。

監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。