信用情報に残る個人再生の記録は、いつ消えるのか
信用情報に残る個人再生の記録は、いつ消えるのか
〜完済後の登録をたどってわかったこと〜
「個人再生をすると、最低5年はクレジットカードを持てず、スマートフォンや自動車のローンが通らない」――これは、弁護士や司法書士がよく説明する内容です。
ただし、「5年」とはいつから、いつまでを指すのかについては、あまり説明されていません。
実際には、手続を始めた日ではなく、返済を終えた日が起点になることが多いのが現状です。
この記事では、当事務所で個人再生の返済を完了された方について、ご本人の承諾を得て信用情報を確認した実例も交えながら、各信用情報機関のルールと注意点を整理します。
目次
・1.3つの信用情報機関
・2.銀行系(KSC)―7年だが短い
・3.クレジット系(CIC)―一般的に関心が強い
・4.消費者金融系(JICC)―あまり調べられない
・5.CICの延滞情報は実際いつ消える?
・6.まとめ
1.3つの信用情報機関
信用情報とは、ローンやクレジットカードの契約内容と、その支払い状況を記録したものです。これらの情報を集めて管理しているのが信用情報機関で、日本には次の3つがあります。
・KSC(全国銀行個人信用情報センター)……全国銀行協会が運営し、銀行、信用金庫、信用組合などが加盟しています。
・CIC……クレジットカード会社、信販会社、携帯電話会社などが加盟しています。
・JICC……消費者金融や、一部の信販会社が加盟しています。
この3つは、それぞれ別の団体です。収集している情報の種類も、記録を残す期間も異なります。
よく「ブラックリストに載る」という言い方をしますが、そのような名前の名簿が存在するわけではありません。3つの信用情報機関それぞれの記録に、支払いが滞った事実などが登録されているということです。
重要なのは、どの信用情報機関の記録を確認されるかは、申込み先の業種によって異なるという点です。
住宅ローンを銀行に申し込めばKSC、クレジットカードを申し込めばCICの情報が照会されます。
そのため、ある信用情報機関では記録が消えていても、別の機関にはまだ残っていることがあります。「もう記録が消えたはずなのに審査に落ちた」というケースの多くは、これが原因です。
2.銀行系(KSC)―7年だが短い
KSCは、官報に掲載された情報を収集しています。
個人再生を申し立てると、再生手続の開始が官報に公告されます。KSCは、官報から「民事再生手続開始決定」の事実を取得し、信用情報として登録します。
登録される期間は、開始決定の日から7年です。以前は10年でしたが、2022年11月に7年へ短縮されました。
ここで押さえておきたい点が、2つあります。
(1)登録されるのは「開始決定」の情報
KSCに登録されるのは、個人再生の「開始決定」に関する情報です。
再生計画が認可されたことや、再生計画に基づく返済を終えたことは、KSCには登録されません。
認可を受けた後、3年かけて返済する場合、完済した時点では、開始決定からすでに3年半ほどが経過している計算になります。
そのため、完済後にKSCの記録が残る期間は、残り3年半ほどになることがあります。
(2)銀行ローンには保証会社が付いていることが多い
銀行のローンには、通常、保証会社が付いています。
銀行のカードローンや目的別ローンについて返済が滞ると、保証会社が債務者に代わって銀行へ全額を支払います。これに伴い、債務者に対する請求権が銀行から保証会社へ移ります。
これを「代位弁済」といいます。
保証会社には、CICに加盟する信販会社や、JICCに加盟する消費者金融が多くあります。
信用情報上は、代位弁済が行われた時点で、銀行との契約は終了したものとして扱われます。代位弁済の記録が残る期間は、契約終了から5年です。
つまり、滞納が続いている間、銀行についていつまでも「延滞」と記録され続けるわけではありません。
そのため、銀行系の記録は、一般に考えられているほど長く残らない場合があります。むしろ、次に説明するCICの記録よりも先に消えることも珍しくありません。
3.クレジット系(CIC)―一般的に関心が強い
CICでは、2009年4月から官報情報の収集を取りやめており、現在は法的整理に関する情報を保有していません。
そのため、個人再生を申し立てたことや、弁護士に債務整理を依頼したこと自体が、そのまま登録されるわけではありません。
CICに登録されるのは、「異動」と呼ばれる情報です。
これは、支払いが約束どおりに行われなかったことを示す記録です。
個人再生では、弁護士が債権者に受任通知を送った時点で返済を止めます。その結果、滞納が「異動」として登録されます。
問題は、この記録が残る期間です。
CICでは、信用情報の保有期間を、「契約期間中および契約終了後5年以内」としています。
ここが、誤解されやすいポイントです。
個人再生では、再生計画の認可を受けた後、3年から5年かけて分割返済を行います。この返済を続けている間は、契約がまだ終了していません。
そのため、返済期間中は異動情報が消えず、登録されたままになります。
また、完済した瞬間に契約終了として扱われるわけでもありません。
債権者がCICに対して「契約が終了した」と報告して、初めて契約終了として登録されます。
当事務所で確認できた範囲では、完済した月の翌月に契約終了が登録されている例が多くみられました。ただし、一部の債権者では、完済の翌々月に契約終了が登録されていた例もあります。
5年の保有期間は、契約終了が登録された時点から始まります。
誤解されやすい期間の数え方
× 個人再生を始めてから5年で消える
○ 個人再生の返済を終えた後、5年と少し先まで残る
3年の返済計画であれば、申立てから記録が消えるまで、通算して8年半ほどかかることがあります。
KSCの官報情報は開始決定から7年ですので、CICの記録のほうが長く残る場合があります。
「銀行の記録が一番長い」と思われがちですが、実際には順番が逆転することがあるのです。
登録期間の流れ
4.消費者金融系(JICC)―あまり調べられない
JICCでは、2019年10月1日以降の契約について、信用情報の保有期間を「契約が続いている間と、契約終了後5年以内」と定めています。
基本的な考え方はCICと同じです。
そのため、JICCについても、個人再生の返済を終えてから5年ほど記録が残る可能性があります。
ただし、当事務所では、JICCについて、完済後の登録状況を実際に確認できた例がまだありません。
5.CICの延滞情報は実際いつ消える?
3つの信用情報機関のうち、個人再生を経験された方が最も気にされるのは、CICであることが多いです。
クレジットカードやスマートフォンの分割購入など、日常生活のさまざまな場面に影響するためです。
(1)キャッシュレスが進んだ今でも残る不便
デビットカードや電子マネーが普及したことで、日常の買い物に困る場面は少なくなりました。
それでも、クレジットカードがなければ利用しにくいサービスは残っています。
たとえば、高速道路のETCは、利用料金を後日まとめて引き落とす仕組みです。そのため、利用と同時に預金口座から引き落とすデビットカードでは、原則としてETCカードを作れません。
また、次のような場面でも不便が生じることがあります。
・月額制サービスで登録を断られることがある
・ホテルやガソリンスタンドでデビットカードを使えないことがある
・海外では利用できるATMや店舗が限られることがある
・家族カードを作れない
生活面では、特にスマートフォンの分割購入と、信販系の保証会社が付いた賃貸物件の入居審査が、問題になりやすい場面です。
(2)当事務所で確認できた登録例
ここからは、当事務所で個人再生による返済を行った方について、ご本人の承諾を得て、実際の信用情報を確認させていただいた例をご紹介します。
3年の返済計画を半年ほど繰り上げて完済された方の例では、完済の登録も、その分だけ半年早まっていました。
前倒しで返済した分だけ、信用情報の記録が消える時期も前倒しになるということです。
ただし、1社だけ、契約終了の登録が約1か月遅れている債権者がありました。
この点は、債権者ごとの事務処理によるものであり、債務者側から登録時期を指定したり、早めたりできるものではありません。
もうひとつ、完済の記録が残っている状態で、新たな借入れがない方について、携帯電話の分割契約が認められた例がありました。
一方で、同じ時期に申し込んだ別の会社のクレジットカードは、審査に通りませんでした。
これらの実例から、次の2点がわかります。
・繰り上げて返済すれば、その分だけ早く記録が消える可能性がある
・審査基準は一律ではなく、信用情報が残っていても通る契約と通らない契約がある
信用情報が残っている間は、すべての審査に通らないというわけではありません。
6.まとめ
・CICとJICCでは、登録期間の数え始めは、個人再生を始めた日ではなく、原則として返済を終え、契約終了が登録された時点です。
・照会される信用情報機関は申込み先によって異なり、銀行はKSC、クレジットカード会社は主にCICを確認します。
・CICは完済後から5年ほど、KSCは開始決定から7年です。そのため、CICの記録のほうが長く残る場合があります。
・繰り上げて返済を終えれば、その分だけ契約終了の時期が早まり、記録が消える時期も早まる可能性があります。
・ご自身の信用情報は、3つの信用情報機関にそれぞれ開示請求をして確認できます。カードやローンを申し込む前に、一度確認しておくのが確実です。
なお、この記事でご紹介した登録時期は、当事務所で実際に確認できた範囲に基づくものです。
信用情報機関へ登録する時期は債権者によって異なるため、すべてのケースで同じ時期に登録・削除されることを確約するものではありません。あらかじめご了承ください。
監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。
