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赤字申告事業者でも個人再生手続は可能か―自営業者の個人再生1

実際の収益状況が重要に

今日から全5回で自営業者の個人再生相談でよく問題になる事柄をご紹介します。

第1回は、「赤字申告でも個人再生手続を利用できるのか」です。

個人再生手続きでは、収入を証明する資料を裁判所に提出します。個人事業者の場合、前年の確定申告書の控えが収入を証明する資料になります。

確定申告書の所得(収入-経費)が赤字(マイナス)の場合、一見すると事業収益がありません。そのため、赤字申告の場合、債務を減額しても、返済できるだけの収入が無いようにも思えます。

しかし、所得が赤字であることだけで、ただちに返済の見通しが立たない(履行可能性がない)とあきらめるのはまだ早いです。確定申告書上、所得がゼロ、もしくはほとんどなくても、返済能力があることを適切に裁判所に説明することで、個人再生手続きを行える場合があります。

例えば、減価償却費、専従者控除、青色申告特別控除など、申告書上経費として計上する項目であっても、実際の支払いを伴わないものがあります。これらの項目は、経費計上した金額に相当する現金が手元に残っていたとして、所得に繰り入れて説明することが可能です。

また、自宅家賃や光熱費、日用品、車両等を経費に繰り入れている場合もよく見受けられます。

各費用相当額について、事業経費と家計を分別出来るのであれば、経費ではなく事業所得に繰り入れて説明することも可能でしょう。さらに、証明は難しいものの「申告外の所得があること」を示すことも考えられます。

このように、確定申告書上所得がなくても、実際の収益状況や家計の状況が違うことを説明して再生手続きを進められる場合があります。ただし、この場合、「事業収入と経費の支払い」「事業所得を家計でどのように使っているか」という実際のお金の流れをきちんと裁判所に説明できるだけの資料を用意あるいは作成する必要があり、難しい作業になります。

確定申告書の所得が赤字という理由だけで、個人再生を諦める必要はありません。実際のお金の流れを把握して、この機会に債務を整理したいとお考えの方は、一度、当事務所までご相談ください。

 

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監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。