手続き全般について

弁護士が再生の依頼を断る理由~TMGの場合~

当事務所には、関西圏を中心に、多くの個人再生のご相談が寄せられています。

もっとも、その中には、残念ながら個人再生の申立てをお受けできないケースも相当数あります。

前回は、他の法律事務所で個人再生を断られる理由について説明しました。
今回は、個人再生の相談を多く受けている当事務所が、どのような場合に依頼をお断りすることがあるのかを、多い順にご紹介します。

目次

1 清算価値が高額になる
2 支払停止から相当の期間が経過している
3 事業収益を証明できない
4 債権者の反発が大きすぎる
5 浪費や偏頗弁済がおさまらない
6 連絡に応じない、積立てをしない
7 まとめ

1 清算価値が高額になる

(1)清算価値による弁済額の上昇

たとえば、負債額が800万円の相談者の場合、小規模個人再生による最低弁済額は160万円です。3年払いであれば、月々の返済額は約4.5万円になります。

世帯月収が30~50万円以上あれば、支払える水準といえます。

しかし、最近は地価の上昇により、全国的に戸建てやマンションの価値が上がっています。特に、購入から10年前後の物件では、住宅ローンの残高よりも住宅の査定額のほうが高くなっているケースが少なくありません。

この場合、仮に自宅を売却すると200万円~300万円程度の差益が見込まれることがあります。このとき、不動産の清算価値が200万円~300万円と評価されます。

当初は最低弁済額160万円で済むと考えていた事案でも、清算価値が250万円になることで、返済総額は160万円→250万円に増加し、月々の返済額が増えることがあります。

最近では、大阪市内や北摂の人気地域はもちろん、東大阪市など周辺地域でも、このような例がみられます。

(2)再生計画の延長

このような物件をお持ちの場合には、想定される弁済額について、4年、5年の返済計画を検討する必要があります。

それでも支払額があまりにも高額になる場合には、個人再生を断念せざるを得ないこともあります。

無担保の相続不動産や、高額な自動車などをお持ちの方も同様です。

2 支払停止から相当の期間が経過している

(1)いったん支払いを止め、督促により慌てて対応するケース

数年前に大手法律事務所へ任意整理を依頼したものの、途中で分割金を支払えなくなり、その法律事務所から辞任されたという相談もあります。

その後、対応しないまま時間が経ち、債権者から訴訟を起こされたため、「任意整理のやり直しは難しいので、次は個人再生で何とかしたい」というご相談です。このような相談は相当数あります。

(2)長期放置事件は要注意

もちろん、特に大きな問題がなく、個人再生の申立てまで進められる事件もあります。

しかし、任意整理が中断した後、個人再生の相談に来られるまでに、たとえば1年以上放置している場合には注意が必要です。

その理由は、支払停止期間中の収入や支出状況について、裁判所から細かく確認されるリスクがあるからです。

また、支払停止中に一定以上の高額資産を譲渡していると、さらに調査を受ける可能性が高くなります。

たとえば、支払停止中に離婚して自宅を譲った、廃業して店舗や資産を譲渡した、といったケースです。

これらは、個人再生委員が選任され、詳しく調査されやすいケースといえるでしょう。

(3)TMGによる事前調査

当事務所では、できるだけ個人再生委員の選任を回避し、スムーズに手続開始ができるよう、支払停止中の財産移転がある場合には、その譲渡が妥当だったかどうかを詳しく確認します。

ところが、その資料を出せない、または出さない場合には、申立てに大きなリスクが残ります。

そのため、財産譲渡の調査に協力いただけない事案では、当事務所では依頼をお受けできないことがあります

3 事業収益を証明できない

(1)個人事業者の相談が多い

個人再生手続を利用する個人事業者は、全国的には全体利用者の5%程度とされています。

一方、当事務所では、個人事業者の方からの相談が全体の30%以上を占めており、これまで数多くの個人事業者の再生事案を扱ってきました。

(2)依頼をお断りすることが多いケース

もっとも、個人事業者の再生相談では、依頼をお断りすることが少なくありません。特に多いのは、「収入を証明できない場合」です。

具体的には、実際の手取りは月30万円ほどあるものの、確定申告では毎年赤字になっているようなケースです。

このような状況になる理由としては、たとえば次のようなものがあります。

・売上の一部を申告していない
・生活費を経費に入れている
・経費を水増ししている

(3)修正申告の可能性とその後の生活

赤字又はほぼ無所得の事業者が、再生手続を通すのは無理に近い状況が多いです。
ただし、事情によっては、修正申告を行うことで将来性を証明し、再生手続へと進められる場合もあります。

しかし、たとえば年間所得280万円で修正申告をすれば、それに伴って所得税、住民税、国民健康保険料などの負担が大きく増えることがあります。

そのため、修正申告したことで増える税金や保険料を支払いながら、さらに個人再生の返済も続けられるだけの収入や収支改善が見込める実績を作る必要があります。

この見通しが立たない場合には、個人再生が申立てできないことが見込まれます。

4 債権者の反発が大きすぎる

(1)一般的には不同意のリスクは小さい

個人再生では、多くの場合、小規模個人再生手続を利用します。

小規模個人再生では、債権額の過半数、または債権者数の過半数が「不同意」としないことが必要です。

多くの事件では、債権者は銀行、信販会社、貸金業者などです。このような金融業者は、特殊な事情がない限り、再生計画に反対しないことがほとんどです。

(2)個人債権者が多い特殊例

しかし、次のような場合には注意が必要です。

・建築業、飲食業、その他の個人事業をしており、特定の個人から多額の借入れがある
・外注費や仕入代など、多数の買掛金が滞っている
投資勧誘などを行い、複数の顧客から返金を求められている

このようなケースでは、債権者の反対によって、再生計画が成立しない可能性があります。

そのため、給与所得者再生で認可を受けられる見込みがある場合などを除き、当事務所では依頼をお断りすることがあります。

5 浪費や偏頗弁済がおさまらない

(1)弁護士依頼後の節約について

弁護士に依頼した後は、無駄遣いは厳禁です。

たとえば、「毎年恒例だから」という理由で海外旅行に行ったり、高額なホテルに宿泊したり、家族に高額なプレゼントをしたりすると、浪費とみられる可能性があります。

また、頻度が少なくても、宝くじの購入、パチンコ、公営ギャンブル、数万円単位のゲーム課金などは控えていただく必要があります。

(2)浪費は家計収支、通帳で分かる

個人再生では、申立ての2か月前から認可を得るまでの間、「家計収支表」を作成し、家族の支出額や使い道を報告する必要があります。

家計収支項目に浪費が多い場合、たとえば娯楽費、交際費、外食費が多い場合は問題になります。

また、浪費を隠している場合にも注意が必要です。
家計収支上はお金が余っているにもかかわらず、電気代や電話代が遅れていたり、滞納解消を求めても対応できない…。

このような収支状況では、裁判所から認可してもらえないリスクがあります。

(3)高額の仕送り、偏頗弁済

また、長年続けているという理由で、親に高額の仕送りを続けたり、勤務先に対する前借りの返済を続けたりすることも問題になります。給与天引きで返済している場合も同じです。

このような支払いは、偏頗弁済として、申立てにおいて不利に扱われることがあります。

具体的には、申立前後の送金額を返済額に上乗せするよう指示されることがあります。その結果、今後の返済計画がより苦しくなる危険があります。

(4)ご協力いただけない場合の対応

弁護士に依頼した直後は、長年の生活習慣から使い過ぎに気づけなかったり、特定の支払いが個人再生を行ううえで避けるべき行為にあたると気づけなかったりすることもあります。

そのため、当事務所では、浪費や偏頗弁済について、契約時にリーフレットをお渡しし、絶対に控えていただくよう具体例を交えて説明しています。

また、受任後しばらくしてから、通帳履歴や家計収支をご提出いただき、具体的な支出をお聞きし、事情を確かめながら、浪費や不要な支払いに当たる場合には、以後、それらをしないようにお伝えしています。

それでも守っていただけない場合には、残念ながら個人再生の申立てをお断りする場合があります。

6 連絡に応じない、積立てをしない

(1)連絡に応じない

信じられない話かもしれませんが、弁護士に依頼した後、連絡が一切つかなくなる方もまれにいます。

個人再生によって債務の減額を受けることが最終目的ですが、依頼後にいったん請求が止まると安心してしまい、その後の申立準備をしなくなってしまう方が一定数おられるのです。

当事務所では、メール、LINE、電話などで応答いただきたい旨のご連絡を行います。
それでも反応がない場合には、最終的にご自宅へ書面を郵送して、手続を進めるようご通知することがあります。

それでも対応していただけない場合には、最終的に辞任することがあります。

(2)積立てをしない

また、毎月の積立てが予定どおりできない場合にも、再生認可の見込みがないと判断し、再生事件としてお受けできないことがあります。

なお、自己破産も選択肢として考えられる場合には、自己破産への方針変更を検討することもあります。

7 まとめ

当事務所では、個人再生の相談を多く受けていますが、すべての事件をお受けできるわけではありません。
特に、清算価値が高額になる場合、支払停止後に長期間放置している場合、事業収益を証明できない場合、債権者の反対が強く予想される場合には、慎重な判断が必要です。
また、依頼後の浪費、偏頗弁済、連絡不通、積立不足も手続を難しくします。
個人再生を成功させるには、資料提出、家計管理、弁護士との連絡を継続することが重要です。

監修者情報

弁護士

吉田浩司(よしだこうじ)

専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)

2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。