個人再生でNISA・iDeCo・株式・仮想通貨は残せる?投資資産の扱いを弁護士が解説
個人再生でNISA・iDeCo・株式・仮想通貨は残せる?投資資産の扱いを弁護士が解説
個人再生は、裁判所を利用して借金を大幅に減額しながら、生活再建を目指す手続です。自己破産との大きな違いは、一定の財産を手元に残したまま手続を進められる可能性がある点にあります。
結論
個人再生では、NISA・株式・投資信託・iDeCo・仮想通貨などを保有したまま手続を進められる場合があります。
ただし、資産価値が大きい場合は返済額が増える可能性があります。「残せるか」だけでなく、「残した場合に返済できるか」を確認することが重要です。
以下のような資産を保有している方からは、「個人再生で借金を整理しても、これらの資産は残せるのでしょうか」というご相談をいただくことがあります。
- NISAで積み立てている投資信託
- 社内持株会の株式
- iDeCo
- 投資用不動産
- FX口座・仮想通貨
個人再生では、これらの投資用資産を保有したまま手続を進められる場合があります。もっとも、どのような資産でも自由に残せるわけではありません。
個人再生には清算価値保障の原則があり、保有する財産の価値によっては返済額が増える場合があります。
以下では、まず清算価値保障の原則を説明したうえで、NISA・株式・iDeCo・投資用不動産・仮想通貨などの扱いを整理します。
なお、個人再生の運用は、裁判所、再生委員、担当者によって異なる場合があります。実際の取扱いについては、申立先の裁判所や担当弁護士へご確認ください。
目次
- 1 個人再生で重要な「清算価値保障の原則」
- 2 株式・投資信託は残せるのか
- 3 iDeCo・企業型確定拠出年金の扱い
- 4 投資用不動産は残せるのか
- 5 仮想通貨・FX・バイナリーオプションは残せるのか
- 6 その他の投資商品は残せるのか
- 7 まとめ
1 個人再生で重要な「清算価値保障の原則」
清算価値保障の原則とは
個人再生では、保有財産が多いほど返済額が増える可能性があります。
個人再生では、自己破産をした場合に債権者へ配当される金額よりも少ない金額で再生計画を認可することはできません。
これを清算価値保障の原則といいます。
簡単にいえば、財産を多く持っている方が個人再生を利用する場合には、その財産価値に見合った金額以上を返済する必要があるというルールです。
清算価値保障の原則の具体例
例えば、日常的に使っている現金・預金のほかに、次のような財産があるとします。
- 保険解約返戻金 150万円
- 株式 50万円
この場合、清算価値は合計200万円です。
個人再生手続による最低弁済額が100万円と見込まれていたとしても、清算価値が200万円であれば、少なくとも200万円以上を返済する内容の再生計画を作成しなければならない可能性があります。
※現金については、99万円分まで除外して保有を認める裁判所が大多数です。預金残高は、現金と同じ扱いにする裁判所(大阪)もあれば、全額清算価値に組み入れる裁判所もあります。
資産を残すための返済額を想定すること
つまり、個人再生で大切なのは、「資産を残せるかどうか」だけではありません。
資産を残した結果、返済額がどれだけ増えるのかを見込んだうえで、無理なく返済できるかを検討することが重要です。
2 株式・投資信託は残せるのか
保有株・投資信託(NISA口座含む)
株式や投資信託は、個人再生を申し立てたからといって、直ちに売却しなければならないわけではありません。
ただし、いずれも申立時点の時価評価額が保有資産として清算価値に加算されます。
NISA口座であっても特別扱いはされず、時価額が財産として評価されます。
例えば、NISA口座内に80万円分の投資信託があれば、その80万円が清算価値として計上される可能性があります。
清算価値の総額が再生計画による弁済総額以下であれば、株式や投資信託を保有したまま手続を進められる場合があります。
社内持株会
社内持株会の株式についても、財産的価値があるため評価の対象になります。
証券会社を通じて持株会の株式を保有している場合は、その証券会社の口座履歴や残高資料により、保有資産額を証明できます。
ただし、会社によっては持株会の株式が別途共同管理されており、現在の正確な保有株数がすぐには分からない場合もあります。
このような場合には、保有株数や評価額をどのように示すかが実務上の課題になることがあります。
評価額の変動という問題
株式・投資信託は、日々時価が変動します。
個人再生手続は、申立てから再生計画の認可確定まで、短くても数か月程度かかることが一般的です。
再生計画案を裁判所に提出した時点では清算価値が弁済予定総額を下回っていても、その後の相場上昇によって清算価値が増大すると、再生計画に影響する可能性があります。
そのため、実務上は、価格上昇の可能性を見越して、弁済額をやや多めに設定しておく必要が生じることがあります。
価格変動の大きい資産を保有したまま進めることは、再生計画の安定性という点でリスクがあります。
当事務所での扱い
保有株式や投資信託は価値が変動するため、再生計画との関係では注意が必要な資産です。
また、個人再生を検討される方の中には、住宅ローン、固定資産税、市県民税、国民健康保険料などを滞納している方も少なくありません。
将来に向けた資産形成は大切ですが、個人再生が必要な状況では、まず早期の認可を目指すことが重要です。
そのため、当事務所では、投資用資産や持株会の株式がある場合、未払いの税金や申立費用への充当をご提案することがあります。
このように、資産を売却して滞納税や申立費用に充てる場合、その使途が有用の資として認められ、清算価値を適切に整理できる場合があります。
もっとも、事情によって売却・解約が難しい場合もありますので、無理にお勧めするわけではありません。
3 iDeCo・企業型確定拠出年金の扱い
差押えが禁止されているという特徴
NISAと混同されやすい制度として、iDeCoや企業型確定拠出年金があります。
しかし、これらは一般的な証券口座とは考え方が異なります。
iDeCoや企業型確定拠出年金は、原則として60歳になるまで自由に解約や払い戻しができません。また、確定拠出年金法により、債権者による差押えが禁止されています。
そのため、裁判所では、iDeCoや企業型確定拠出年金を清算価値に含めない運用が一般的です。
例外的な扱い
ただし、iDeCoや企業型確定拠出年金であっても、例外的に清算価値に算入される場合があります。
例えば、次のようなケースです。
- 60歳を過ぎており、すでに受給できる状態にある
- 受給開始時期が間近に迫っている
- すでに給付を受けている
このような場合には、すでに受け取った分や、認可までに給付が見込まれる分について、清算価値に含まれることがあります。
当事務所での扱い
iDeCoや確定拠出年金については、それ自体を資産として意識して心配される方は多くありません。
むしろ、通帳履歴や退職金規程を確認する中で、「これも資産になるのですか」と初めて気づかれるケースがあります。
個人再生・破産の申立件数が少ない裁判所では、iDeCoや確定拠出年金を清算価値に算入すべきではないかと指摘を受けることがあります。
その場合でも、これらが法律上の差押禁止財産であることを説明すれば、財産から除外されることが殆どです。
なお、中小企業退職金共済(中退共)による退職金も差押禁止財産であり、清算価値の対象外とされるのが一般的です。
4 投資用不動産は残せるのか
投資用不動産とローンの問題
ワンルームマンション、中古物件、駐車場用地などを保有している方から、「投資用不動産を残したまま個人再生できますか」というご相談をいただくことがあります。
不動産も資産の一種ですので、その清算価値に見合った返済が可能であれば、理論上は残したまま再生することも不可能ではありません。
しかし、実際には投資用不動産を残せないケースが多いのが実情です。
最大の理由は、ローンと担保権の問題です。
住宅ローン特則は投資用不動産には利用できません。
個人再生には住宅ローン特則という制度がありますが、これは自宅を守るための制度です。投資用不動産のローンには利用できません。
そのため、再生申立後に投資用不動産のローン支払いを止めると、金融機関が担保権を実行し、競売や任意売却に進む可能性があります。
結果として、投資用不動産を維持できないことが多いのが現状です。
収益性が悪化しているケース
実務上は、次のような事情から、個人再生の申立てを機に投資用不動産の売却を希望される方も多く見られます。
- 家賃収入よりローン返済額が多い
- 空室が続いている
- 購入時の説明と実態が異なっていた
- 修繕費や管理費の負担が重い
売却後にローン残高が残った場合、その不足分は通常の借金と同様に個人再生の対象となり、減額されるのが一般的です。
当事務所での扱い
当事務所でも、投資用物件を保有する方からのご依頼で個人再生手続を行ったことがあります。
いわゆるワンルームマンション投資のように、勧誘を受けて割高な物件のローンを組まされたケースがありました。
この例では、申立前に任意売却を行い、残ったローン残債を再生手続で圧縮します。
一方で、ローンのない不動産を所有している相談案件もあります。
このような場合は、不動産の清算価値が高くなり、再生計画の返済総額が数百万円から1,000万円以上になることもあります。
投資用不動産を残したまま個人再生を進めることは、住宅とは異なり、かなり難しいケースが多いと考えておく必要があります。
5 仮想通貨・FX・バイナリーオプションは残せるのか
仮想通貨
ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨は、株式や投資信託と同様に、換金できる価値があるものとして扱われます。
そのため、保有口数に応じた評価額が清算価値になります。
マイナーな仮想通貨であっても、相場が確認できるものであれば、評価額を算出して提出することになります。
FX・その他の証拠金口座
外国為替証拠金取引(FX)や商品先物取引などの口座を保有している方もいます。
こうした口座では、実際に外貨や商品を購入するのではなく、証拠金を差し入れて取引を行います。
そのため、資産として評価されるのは、取引のために預け入れた証拠金や評価損益を反映した残高です。
当事務所での扱い
多くの方は、個人再生の相談時点ではすでに取引を止めていることがほとんどです。
まれにポジションを保有したままの方もいますが、その場合は一旦決済をお願いすることがあります。
理由は二つあります。
- FXや仮想通貨取引が借金の原因、または一因となっている場合が多いこと
- 価格変動が大きく、清算価値が変動しやすいこと
たとえ、取引で損失を出していないとしても、続けたまま申立てを行うと、裁判所や再生委員から問題視される可能性があります。
再生手続き中の取引が法律上に禁止されているわけではありませんが、裁判所や再生委員からどのように見られるかは十分に考慮しておく必要があります。
なお、仮想通貨・FX・バイナリーオプションの口座については、ご本人から申告されることは多くありません。
クレジットカードの利用明細や通帳の送金履歴から口座への送金が確認され、こちらから確認して初めて判明するケースが多いです。
6 その他の投資商品は残せるのか
積立型の金(ゴールド)、投資性保険、REIT(不動産投資信託)、クラウドファンディング、リゾート会員権などを保有している方もいます。
これらについても、基本的な考え方は同じです。
換金できる財産であれば、その評価額が清算価値に組み込まれる可能性があります。
特に、一時払い終身保険や外貨建て保険は、解約返戻金が高額になっていることがあります。
そのため、保有額が大きい場合は、事前に評価額を確認しておくことが重要です。
7 まとめ
個人再生では、自己破産とは異なり、投資用資産を直ちに処分しなければならないわけではありません。
NISA・株式・投資信託・持株会・仮想通貨などは、保有したまま手続を進められる場合があります。
ただし、これらの資産は清算価値として評価されるため、資産額が大きいほど返済額も増える可能性があります。
また、投資用不動産については担保権の問題があり、実際には維持が難しいケースが少なくありません。
個人再生を検討する際は、「資産を残せるかどうか」だけでなく、「残した場合に返済額がどの程度増えるのか」という視点で考えることが重要です。
保有資産の種類や金額によって結果は大きく異なりますから、個人再生を検討されている方は、保有資産の評価額や返済額の見込みを早めに確認することが重要です。
当事務所では、株式・NISA・iDeCo・投資用不動産・仮想通貨を保有される方の個人再生相談も取り扱っています。
個人再生をお考えの方は、お気軽にご相談ください。
監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
2004年(旧)司法試験合格 2006年弁護士登録、2010年8月にTMG法律事務所開業。任意整理、個人再生、自己破産等の債務整理事件に数多く取り組んでいる。特に個人再生の取扱が多い。