個人再生委員の面談で「厳しい」と感じるのはなぜ?聞かれることと事前の備え
個人再生を申し立てたあと、裁判所から「個人再生委員を選任します」と連絡があると、多くの方が不安になります。再生委員とはどんな人なのか、面談では何を聞かれるのか、厳しく問い詰められるのではないか。インターネットで「再生委員 面談」と調べている方も多いと思います。
大阪地方裁判所では、以前は弁護士が代理人として申し立てた事件に再生委員が付くことはまれでした。しかし最近は選任される事件が増えています。当事務所の申立てでも、再生委員が選任される割合は3割程度あります。
この記事では、当事務所が申立代理人として同席してきた面談と、裁判所から再生委員に選任された経験をもとに、面談の実際と、準備しておきたいことをご説明します。
目次
・1.再生委員との面談は何のためにあるのか
・2.面談の場所と、同席する人
・3.かかる時間と回数
・4.服装と持ち物
・5.面談でよく聞かれること
・6.「厳しい」と感じやすいのはどんなとき
・7.面談で気をつけたいこと
・8.再生委員の費用は早めに準備を
・9.まとめ
1.再生委員との面談は何のためにあるのか
個人再生委員は、裁判所から選ばれる弁護士です。申立人の代理人ではなく、中立の立場で、申立人の家計や財産を調べ、手続を始めてよいかどうかの意見を裁判所に出します。
面談は、その調査の中心になる場です。申立書や資料だけではわからない点を、本人から直接聞いて確かめます。
再生委員は、申立人を責めたり、手続を止めたりするために質問するわけではありません。裁判所に「この人は再生計画どおりに返済していける」と報告できるだけの根拠を集めることが目的です。この点を知っておくだけでも、面談の受け止め方はずいぶん変わると思います。
再生委員が手続の各段階で何を確認しているかは、連載「個人再生委員はどこを見ている?」でも詳しく紹介しています(記事の最後にリンクがあります)。
2.面談の場所と、同席する人
面談は、再生委員の法律事務所で行うのが一般的です。大阪地裁本庁の事件では、再生委員の事務所のほとんどが大阪市北区や中央区(梅田、淀屋橋、本町、南森町のあたり)にあります。
申立人本人がオンラインで面談を受けることは、ほとんどありません。原則として事務所に出向くことになると考えておいてください。
一方で、家計を立て直すために配偶者の協力が欠かせない事案や、配偶者が手続に強い関心を持っている事案では、配偶者が面談に同席したり、オンラインで参加したりしたこともあります。
当事務所では、面談には代理人の弁護士が必ず同席します。事務所によっては代理人が同席しないこともあると聞きますので、依頼している弁護士に事前に確認しておくと安心です。
3.かかる時間と回数
面談の時間は事案によって大きく違います。30分かからずに終わることもあれば、3時間近くかかったこともあります。事前に所要時間を知らされることはほとんどないので、当日は時間に余裕を持っておくことをおすすめします。
回数は、1回で終わることが多いです。ただし、家計の状況から返済を続けられるかに不安がある場合や、選任後に事情が変わった場合、申告していなかった財産や債権者が見つかった場合には、改めて聞き取りの場が設けられることがあります。
4.服装と持ち物
面談は仕事帰りの時間帯に行われることが多く、服装は仕事着のままで構いません。最近は弁護士もカジュアルな服装で仕事をしていることが多く、わざわざスーツを用意する必要はありません。
持ち物については、破産で管財人が付いた場合と大きく違う点があります。再生委員との面談では、通帳などの原本の確認を求められることは少なく、何かを預けることもほとんどありません。
これは、二つの手続で財産を管理する人が違うためです。破産で管財人が付くと、本人の財産はいったん管財人が管理し、必要に応じて本人に返す仕組みになっています。これに対して個人再生では、手続が始まった後も財産を管理するのはあくまで本人です。再生委員は、本人の管理の状況を確認して助言したり、裁判所に意見を述べたりする立場にとどまります。
必要な資料があれば、代理人の弁護士から事前に指示がありますので、それに従ってください。
5.面談でよく聞かれること
(1)今の生活で返済を続けられるか
再生委員がもっとも重視するのは、今の生活を続けながら、本当に返済していけるのかという点です。再生委員が付く事件の大部分は、この点に何らかの確認が必要なケースです。
そのため、通帳の入出金のひとつひとつが何のお金なのか、家計収支表に書いた収入や支出の金額にどんな根拠があるのか、今の仕事を続けられる見通しがあるか、収入を増やしたり支出を減らしたりする余地があるか、といったことを詳しく聞かれます。
(2)財産の評価
次によく聞かれるのは、財産の評価についてです。自宅などの不動産をどのように査定したのか、申告から漏れている不動産や預金、保険などの財産がないか、といったことを確認されます。
(3)弁護士に依頼する前の返済や送金
借入れの返済が苦しくなってから特定の人にだけ返済していないか、弁護士に依頼する前の6か月ほどの間に、親族や勤務先、友人などへ送金していないかも聞かれます。こうした返済や送金があると、その金額を財産に上乗せして返済額を計算し直すことがあるためです。
6.「厳しい」と感じやすいのはどんなとき
(1)返済の見通しを具体的に求められるとき
面談を終えた依頼者から「思ったより厳しかった」という声を聞くのは、ほとんどが返済を続けられるかについてのやりとりです。
再生委員に「今後、返済を続けられますか」と聞かれて、「たぶん大丈夫です」と答えるだけでは足りません。家計のどの支出を、毎月いくらくらいまで減らせるのか。通帳に説明のつかない出金があれば、来月までにその内容を示せるのか。領収書をなくしていれば再発行してもらえるのか。そうした具体的な答えを求められます。
(2)家族の協力が必要なとき
一人暮らしの方であれば、本人の心がけ次第で対応できることがほとんどです。しかし、配偶者や子ども、親と同居している場合は、家族に事情を説明して資料を出してもらったり、家計の節約に協力してもらったりする必要があります。
借入れの原因によっては家族が協力的でないこともありますし、個人再生を申し立てたこと自体を家族に話していない方もいます。そうした方にとって、家族の収入や支出の資料、家計の見直しを求められることは、大きな負担になります。
ただ、再生委員の側から見ると、これは意地悪な質問ではありません。家族と同じ家計で暮らしている以上、家族の協力がなければ返済計画は成り立たないからです。家族の協力が得られにくい事情がある場合は、面談の前に代理人の弁護士に相談し、どう説明するかを一緒に考えておくことが大切です。
(3)見通しが厳しいと指摘されるとき
再生委員として担当した事件で、面談が特に厳しいものになるのは、申立ての段階で、再生委員が付くことも、返済の見通しを細かく問われることも想定されていなかった事件です。
家計にほとんど余裕がないまま申し立てられ、本人にもその自覚がないと、初回の面談で「多少の改善では、安定して返済していくところまでは届かない。見通しは暗いので、いったん取り下げてはどうか」と、手続を終わらせることを示唆されることもあります。こうした指摘を最初の面談で受ければ、厳しいと感じるのは当然でしょう。
同じことは、問題だと意識しないまま、勤務先への返済や両親への送金を続けていた方にも当てはまります。その金額によっては返済額が大きく増え、計画が成り立たなくなることがあるためです。
裏返せば、こうした問題は申立ての前に気づけることがほとんどです。再生委員が付く可能性があるか、家計や過去の返済・送金に問題がないかを申立て前に点検し、手当てをしておけば、面談で初めて指摘されて慌てることは避けられます。
7.面談で気をつけたいこと
当事務所では、面談の前に依頼者へ必ず伝えていることが三つあります。
まず、見込みだけで答えないことです。わからないことは「確認してお答えします」と伝え、後で資料をそろえて回答すれば問題ありません。その場しのぎの答えが後で事実と違うとわかると、かえって信用を失います。
次に、うそをつかないことです。都合の悪いことでも、正直に説明したうえで、どう改善するかを示すほうが、結果的に手続はスムーズに進みます。
そして、財産を隠さないことです。使っていない預金口座の存在や、配偶者に管理を任せている財産が、後になって見つかることがあります。申立ての時点で忘れていたものも含め、思い当たるものがあれば早めに代理人に伝えてください。
8.再生委員の費用は早めに準備を
再生委員が選任されると、申立ての費用とは別に、再生委員の報酬にあてる予納金を裁判所に納める必要があります。大阪地裁では基本が30万円で、まれに事案に応じて10万円から20万円ほど上乗せされることもあります。
大阪以外の裁判所では、10万円台から20万円程度とされていることが多いようです。東京地裁のように、すべての事件に再生委員を選任する運用をしている裁判所では、金額が低めに設定されています。
予納金の納付は、多少であれば待ってもらえることもあります。ただし、3か月以上といった長い猶予を求めると、いったん申立てを取り下げるよう求められることがあります。
当事務所では、負債額や財産の状況から再生委員が選任される可能性がある事件では、申立ての前の段階で、予納金をどう準備するかを依頼者と一緒に考えるようにしています。
9.まとめ
再生委員との面談は、申立人を問い詰める場ではなく、返済計画が無理なく続けられるかを確かめる場です。ただし、そのために家計や財産について具体的な説明を求められるので、準備なしに臨むと「厳しい」と感じやすくなります。
聞かれそうなことを事前に整理し、家族の協力が必要な部分は早めに話し合っておくこと。わからないことは正直にそう答え、後で資料をそろえること。これだけでも、面談はずっと落ち着いて受けられるはずです。
≪連載「個人再生委員はどこを見ている?」≫
1 開始意見:手続開始前の調査(家計・積立・財産)
2 書面決議:再生計画案で確認されること
3 認可意見:認可の段階で確認されること
監修者情報
弁護士
吉田浩司(よしだこうじ)
専門分野:債務整理事件(任意整理・個人再生・自己破産など)
TMG法律事務所 代表弁護士。2006年弁護士登録。2010年8月にTMG法律事務所を開設し、同年から個人再生を中心に債務整理事件に取り組んでいる。個人再生の受任は毎年50件前後。大阪地方裁判所において個人再生委員や破産管財人を務めた経験は複数あり、申立てをする側と、手続をチェックする側の両方から個人再生に多数関わっている。